トラブル
スポーツ傷害
トラブル
運動やスポーツに取り組む場合は、ケガや病気などのトラブルが生じるため、あらかじめ予防策を講じ、もし生じた場合にも、すみやかに対処してリカバリーできるように備えておくことが重要です。
一般にケガと呼ばれているトラブルはスポーツの現場ではスポーツ傷害と呼ばれ、発生要因からスポーツ外傷とスポーツ障害に分けられます。
スポーツ外傷は、他の選手の身体との接触や用具・施設との接触など外からの強い力が加わることによって突発的に身体に生じる損傷です。
代表的なものとして、骨折、脱臼(だっきゅう)、捻挫(ねんざ)、打撲(だぼく)(挫傷(ざしょう))、肉離れ(にくばな)、断裂(だんれつ)、靭帯損傷(じんたいそんしょう)などがあります。
一方、スポーツ障害は、主に身体の一部、あるいは全身の使いすぎや動作に対する筋力の不十分、不適切なフォーム、疲労へのケアの不十分などによって発生する炎症や損傷のことをいい、オーバーユース症候群ともいわれます。代表的なものとして、疲労骨折や野球肘、テニス肘、ジャンパー膝、さらにシンスプリントなどがあります。
また、運動・スポーツをする中で病気にかかり、パフォーマンス低下や運動自体できなくなることがあります。
原因はさまざまですが、栄養や休養の不足とそれによる免疫力の低下、気温などの環境の変化が挙げられます。
代表的なものとして風邪などの感染症や腹痛(ふくつう)、貧血(ひんけつ)、熱中症(ねっちゅうしょう)などの内科的スポーツ障害があります。
運動・スポーツに関わる
ケガ・病気
スポーツ傷害 スポーツ外傷
急性的
1回の強い力によって生じる傷害
スポーツ障害
慢性的
オーバーユースによって生じる傷害
その他の病気
栄養・休養の不足とそれによる免疫力の低下、環境の変化によって生じる疾患
カラダの部位別にみる
「スポーツ傷害」
傷害 | 部位 | 傷害名 | 起きやすい競技 | 症状 |
---|---|---|---|---|
障害 | 肩 | 野球肩 | 野球 | |
肩腱板炎 | 水泳、野球、テニス |
当初は腕を高く上げると肩が痛みます。 後に肩が上げにくくなります。 |
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肘 | 内・外側上顆炎 | 野球、テニス、ゴルフ | ||
腰 | 腰椎分離症 | 野球、サッカー、器械体操 | ||
骨盤 | グローインペイン症候群 | サッカー | サッカーに多く、プレーを続けると 股関節の機能障害が生じます。 |
|
脛 | 疲労骨折 | 陸上、バスケットボール、 バレーボール |
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シンスプリント | 陸上、バスケットボール、 バレーボール |
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膝 | オスグッド | バスケットボール、サッカー | ||
腸脛靭帯炎 | ランニング | |||
膝蓋腱炎 | バスケットボール、バレーボール、 サッカー |
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足 | アキレス腱周囲炎 | バスケットボール、バレーボール、 サッカー |
慢性的な刺激で、アキレス腱の周辺の 組織が炎症を起こします。 |
|
底筋腱炎 | ランニング | 足裏にストレスが加わり、 痛みをともなう炎症が筋膜に起きます。 |
||
外傷 |
首 | バーナー症候群 | ラグビー、アメリカンフットボール、 格闘技 |
首や肩、腕などに強い痛み、 しびれ感などの神経症状もあります。 |
肩 | 肩関節脱臼 | ラグビー、柔道 | ||
腿 | 肉離れ | 陸上、サッカー、テニス | ||
膝 | 前十字靭帯損傷 | バスケットボール、サッカー、 ハンドボール、スキー |
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足 | 捻挫 | バスケットボール、バレーボール ほか多数 |
外科的スポーツ傷害
トレーニングや競技などの運動・スポーツをすることによって生じるケガやトラブルのことを、外科的スポーツ傷害と呼び、大きくスポーツ外傷とスポーツ障害とに分類されます。
スポーツ外傷とは、転倒や衝突などの1回の大きな刺激(外力)によって身体組織が損傷を受ける急性のスポーツ傷害を指し、打撲、創傷(そうしょう)、骨折、脱臼、捻挫、挫傷(断裂)損傷などがあります。多くはどの身体部位にも発生する可能性があり、症状には疼痛(とうつう)、腫脹(しゅちょう)、熱感(ねっかん)、発赤(ほっせき)が見られます。格闘技などのコンタクトスポーツでは、脳震盪(のうしんとう)や臓器損傷(ぞうきそんしょう)なども生じることがあります。
これらの外傷は偶発的に生じることが多いですが、特定の動作や疲労などが原因となることもあります。たとえば、足関節捻挫はジャンプの着地や切り返し動作時に、ハムストリングスの肉離れは全力疾走時に、骨折や打撲は他の競技者との接触で大きな力が加わった際に生じやすいです。また、疲労の蓄積による判断力や反応、筋の耐久性の低下、他の傷害を抱えていることもスポーツ外傷の要因となりうるのです。
一方、スポーツ障害は、長期間にわたって繰り返される小さな刺激(負荷)により起こる筋や腱、靭帯、骨、骨膜などの慢性的なスポーツ傷害を指し、代表的なものに疲労骨折やシンスプリント、アキレス腱炎(けんえん)、膝蓋腱炎(しつがいけんえん)(ジャンパー膝)、上腕骨外側上顆炎(がいそくじょうかえん)(テニス肘)などが挙げられます。
多くの場合、運動痛や運動制限などの症状が見られます。
スポーツ障害の原因にはオーバーユース(使いすぎ)や過負荷が挙げられますが、柔軟性の程度(過度に硬くても柔らかくても要因となる)や骨格のアライメントの異常なども考えられます。
スポーツ外傷の発生が疑われる場合はすぐにPRICEの処置を行ない、また、外傷・障害のいずれに対してもすみやかにスポーツ専門医を受診し、治療することが望ましいです。
そして、症状の回復だけではなく、再発予防も合わせた治療・リハビリテーションを実施することが、運動・スポーツを長く続けていくために大変重要です。
外科的スポーツ傷害
スポーツ中に生じる
ケガ・炎症
スポーツ外傷(急性) | スポーツ障害(慢性) | |
---|---|---|
症状 | 疼痛・腫脹・熱感・発赤 | 運動痛・運動制限 |
発症部位 | 全身 | 筋肉・腱・靭帯・骨・骨膜 |
病名 | 打撲・創傷・骨折・脱臼・捻挫・挫傷など |
シンスプリント・アキレス腱炎・膝蓋腱炎 (ジャンパー膝)・上腕骨外側上顆炎(テニス肘)・疲労骨折など |
特徴 | ▶強い外力によって生じた場合、重症度が高くなります。 ▶初期段階ですみやかにPRICEなどの応急処置を実施すると ダメージを最小限に抑えることができます。 ▶特定の動作・特定部位の疲労が要因となることがあります。 |
▶過度の負担が積み重なり、痛みを主とした 慢性的な症状が続きます。 ▶誤った動作や姿勢など、原因が明らかな場合と、 わかりにくい場合があります。 ▶一度発生すると、回復までの時間が長くかかりやすいです。 |
筋・腱の主な
スポーツ障害Ⅰ
運動・スポーツにおいて、関節を動かす筋や腱のスポーツ傷害には、大きな負荷を急激に受けることで発症する急性のものと、疲労の蓄積や炎症の慢性化によって発症するものがあります。
筋の主な傷害には肉離れ・筋挫傷(きんざしょう)・筋肉痛・こむら返りがあり、腱の傷害には腱炎・腱断裂(けんだんれつ)・腱鞘炎(けんしょうえん)が挙げられます。
競技への復帰に際しては、適切な休養と治療、リハビリテーションが必要となりますが、それにより症状が消失しても、筋や腱の強度が低下することで、競技力の低下や再発につながる可能性があるため、傷害が起こった場合は素早い応急処置を実施し、直ちに専門医を受診し、適切な治療を開始することが重要です。
筋肉痛
原因・起こりやすい部位
力を出し続けると、筋が損傷をすることがあります。これを修復するときに起こる炎症を筋肉痛と呼びます。特に筋肉を引き伸ばして力を出す部位に起こりやすいです。
症状
運動中や直後ではなく、主に翌日に炎症をともなう痛みを感じます。炎症は24~48時間後にピークになり、数日間続きます。
予防・処置
運動の間隔を短くしたり、運動前後のストレッチを行なうことで予防できます。トレーニングを積んで筋代謝を早めるとリカバリーも早いです。
筋けいれん
原因・起こりやすい部位
一般的に「つる」と呼ばれている症状。ふくらはぎ(=こむら))で起きやすいことから、「こむら返り」とも呼ばれています。不十分な水分摂取、疲労や睡眠不足もその一因と考えられます。
症状
筋の収縮は、通常なら脳からの指令を受けて行われますが、何らかの異常により筋への指令が出続けて、痙攣が起こっている状態です。筋の強直状態が数分程度続き、痛みもともないます。
予防・処置
多量の発汗がともなう場合はスポーツドリンクの飲水、疲労によるものであればストレッチ、アイスマッサージも効果的です。
筋挫傷(打撲)
原因・起こりやすい部位
選手同士の激しい衝突などにより筋線維や血管が損傷します。競技によって起きやすい部位は違ってきます。
症状
軽度なら患部を圧迫したときに痛みを感じる程度ですが、中程度以上だと腫れをともなったり、熱を感じるような痛みが出たりします。皮下出血による斑が表れることもあります。また筋の収縮が妨げられ、可動域が制限されることもあります。
予防・処置
できるだけすみやかにPRICEを施し、腫れや痛みの拡大を防止します。
筋・腱の主な
スポーツ傷害Ⅱ
シンスプリント
原因・起こりやすい部位
マラソン選手や陸上選手などランナーに特に起こりやすいです。脛骨(すね)の内側に起こります。
症状
激しい痛みではなく、鈍痛であるのが特徴です。運動時に一時的に痛みが消え、終了した後に再び症状が現れるなど、不規則な症状が出ることもあります。さらに症状が進むと持続的な痛みへと変わります。
予防・処置
症状が軽いうちに運動後のストレッチやアイシングを十分に行います。症状が進んでしまったら長期間休養を取りましょう。軽くなったからと安心すると再発の危険性もあります。
ジャンパー膝
原因・起こりやすい部位
ジャンプ、着地の繰り返しで起こる膝の障害。バスケットボール、バレーボール、ハンドボールなどの選手に多いです。
症状
ジャンプと着地でヒザの曲げ伸ばしの際、大腿四頭筋が収縮します。このとき膝蓋骨と膝蓋腱の接合部に負担がかかり、腱の微小断裂などが生じます。
予防・処置
症状が軽いうちはストレッチを入念に行なったり、患部へのテーピング、サポーターの使用で悪化を防ぎます。症状が進むとジャンプ動作の制限や長期休養が必要になります。
肉離れ
原因・起こりやすい部位
瞬発的な運動をして筋に強い収縮力が加わったときに、その筋組織が断裂すること。ハムストリングス、大腿直筋、大腿内転筋、腓腹筋に起こりやすいです。
症状
筋の損傷部に腫れが生じて、運動の継続は困難になります。損傷の度合いによって自立歩行が可能な場合もあります。
予防・処置
安静、保存療法が一般的。患部をアイシングし、さらに圧迫、固定します。競技への復帰に際しては、回復具合を考慮しながら軽いストレッチなどから始めます。
腱断裂
原因・起こりやすい部位
骨と筋を統合している腱が断裂すること。筋の急激な収縮によって、腱がその力を支えきれなくなって起こります。アキレス腱断裂が知られています。
症状
腱が部分的に切れる「腱不完全断裂」と、腱全体が切れる「腱完全断裂」に分けられます。急激な痛みを感じ、完全断裂では関節を動かすことができなくなります。
予防・処置
線維組織の再生能力は高いため、腱の断端部を接触した状態を保ち、安静にします。また手術で縫い寄せる方法もあります。
関節・靭帯の主な
スポーツ傷害Ⅰ
関節は骨・軟骨・筋・腱・靭帯などが複雑に連結する結合体であることから、その傷害も複合的に生じます。
関節のスポーツ外傷には脱臼や靭帯損傷などがあります。脱臼は、競技中の転倒や接触・着地などの際に強い力が加わることで、関節を構成する骨同士の位置関係が崩れ、損傷した状態をいいます。受傷すると靭帯や関節包を損傷し、時には靭帯と接合する骨の一部が剥離する剥離骨折(はくりこっせつ)を引き起こすこともあります。
一方、靭帯損傷は、競技中の着地や接触で関節可動域を超えた力がかかり、靭帯の一部または全てが断裂することです。一般的に捻挫と呼ばれている傷害はこの靭帯損傷にあたります。
脱臼
原因・起こりやすい部位
外部からの衝撃によって、関節を構成する骨同士がずれたり、外れたりすること。可動範囲の広い肩関節は起こりやすい部位の1つです。
症状
症状程度によって、完全脱臼と不完全脱臼(亜脱臼)に分けられる。関節を構成する部位に損傷をともなうため、痛みを感じ、患部が腫れることもあります。
予防・処置
亜脱臼は捻挫との区別が難しいため、注意が必要です。医療機関にて関節を本来の状態に戻し、関節周辺の損傷が回復するまで固定します。
捻挫
原因・起こりやすい部位
外部から関節の可動範囲を超える圧力を受けたときに起こります。脱臼は関節のずれをともないますが、捻挫は患部の損傷のみが起きた状態です。捻挫は一般用語で、医学用語では損傷部位によって、靭帯損傷などといいます。
症状
痛みを感じ、腫れと熱感をともないます。程度がひどい場合は、内出血が起こります。
予防・処置
予防には運動前の入念なウォームアップが大切です。起きてしまったらただちにPRICEを実施して、症状の悪化を防ぎましょう。腫れや痛みが激しい場合は早めの受診が必要です。
前十字靭帯損傷
原因・起こりやすい部位
大腿骨と脛骨をつなぎ、膝関節を安定させている前十字靭帯の損傷。急な方向転換をしたり、外部からの無理な力が加わったときに起こりやすいです。
症状
膝に血液がたまり、歩行は難しくなります。半月板や内側側副靭帯などの損傷をともなうことも多いです。
予防・処置
独自で判断せずに、専門医の治療を受けましょう。自然治癒することはほとんどないため、競技復帰のためには手術が必要です。また復帰までの期間も6ヵ月から1年かかります。
関節・靭帯の主な
スポーツ傷害Ⅱ
野球肩
原因・起こりやすい部位
野球のように肩を使う競技に起こりやすいです。水泳肩ともいいます。単一の障害形態ではなく、回旋筋腱板などの損傷や炎症、亜脱臼障害、神経障害がともなうこともあります。
症状
肩を動かしたときに痛みが現れ、症状が進むと安静時にも痛みを感じるようになります。回旋時に、引っかかり感をともなうこともあります。
予防・処置
軽度なら肩の安静、アイシング、ストレッチなどに効果があります。病態によってさまざまなので専門医の受診が望ましいです。
テニス肘
原因・起こりやすい部位
テニスでラケットを振る動作を繰り返すことが原因で肘に痛みを感じる障害。肘の外側をバックハンド肘、内側をフォアハンド肘と呼び区別します。
症状
ボールがラケットに当たったときの衝撃で筋の微小断裂や損傷が起こります。ラケットを振るたびに痛みを感じ、タオルを絞ったり、ドアノブを回したときに痛みを感じることもあります。
予防・処置
ストレッチやサポーターで症状を和らげます。程度が進むと競技を休養したり手術が必要になります。
ランナー膝
原因・起こりやすい部位
医学用語では腸脛靭帯炎といいます。膝の外側にある腸脛靭帯に痛みを感じます。陸上競技のランナーに多いことから一般的にこの名前で呼ばれています。
症状
初期症状ではランニング後に痛みを感じ、休むと消えます。症状が進行すると、痛みが大きくなり、治まらなくなります。
予防・処置
予防のためには十分なウォームアップを行なうのが大切です。症状が出てしまったら安静を保ち、アイシングを施し、炎症を抑えます。
半月板損傷
原因・起こりやすい部位
膝にある線維軟骨が三日月形に形成されてできた組織をが半月板といい、膝をひねったときにこの半月板が損傷するのが半月板損傷です。
症状
損傷が軽い場合は特に症状が現れません。さらに進行すると、膝の中でクリック音がしたり、半月板の破片が関節に挟まり、曲がったまま動かせなくなる(ロッキング)といった症状が現れます。
予防・処置
スポーツ活動や日常生活に支障をきたすような場合、自然治癒は期待できないために手術が必要になります。
骨・軟骨の主な
スポーツ傷害Ⅰ
スポーツ中の骨や軟骨の傷害としては、まず骨折が挙げられます。骨折とは転倒や衝突などによって大きな力が加わり、骨に亀裂を生じた損傷をいいます。また、微量な外力であっても、同一部位に繰り返し加えられ、疲労で骨強度が減少したところに負荷がかかって生じる骨折を疲労骨折(ひろうこっせつ)といいます。
一方、軟骨の外傷としては軟骨損傷(なんこつそんしょう)、障害としては椎間板ヘルニア(ついかんばん)、さらには骨と軟骨の複合の障害として成長期におけるオスグッド・シュラッター病などが挙げられます。
骨は再生しやすく治りやすいですが、軟骨の損傷は治癒(ちゆ)が難しいので、手術が必要になることが多いです。
疲労骨折
原因・起こりやすい部位
骨の同じ部位に一度では骨折にならない程度の圧力がかかり、軽度の損傷を続けていると最終的に骨全体の疲労骨折になります。下腿では脛骨、腓骨に、足部では踵骨、舟状骨、中足骨に起こりやすいです。
症状
骨折のように皮下出血や大きな腫れをともなうことはないですが、運動時や圧迫時に痛みを感じます。
予防・処置
一般的な骨折よりも長期の治療が必要な場合が多いです。症状によっては手術が必要になることもあります。
骨折
原因・起こりやすい部位
激しい外的圧力が加わり、本来一続きである骨の構造が断たれること。疲労骨折に対して外傷骨折とも呼びます。
症状
骨折によって骨の表面の神経が破壊されるために痛みを感じます。また患部周囲の組織が損傷し、腫れをともないます。
予防・処置
ギプスや副木によって患部を固定する必要があります。骨折した箇所にずれがなければそのまま固定しますが、ずれている場合は整復によって正常な位置に戻して固定させます。
手のつき方によって、骨折部位の転位方向がかわります。
- 横骨折
骨の長軸に対し垂直に折れる。 - らせん骨折
骨の長軸に対しらせん状に折れる、回転のメカニズムが加わる。 - 斜骨折
骨の長軸に対し斜めに折れる。 - 粉砕骨折
2つ以上の骨片を有する。 - 分節骨折
粉砕骨折の1つとされ、いくつかに分かれた骨折。
骨・軟骨の主な
スポーツ傷害Ⅱ
オスグッド・シュラッター病
原因・起こりやすい部位
脛骨粗面部に牽引力がかかり、脛骨表面が剥がれたり、膨隆したりします。成長期の子どもが発症することがほとんどです。
症状
主に小学校高学年から中学生で発症します。膝蓋腱付着部の脛骨粗面部が膨隆し、やや強い痛みをともないます。
予防・処置
大腿四頭筋やハムストリングのストレッチを入念に行ないます。テーピングやサポーターを使用して、患部を固定します。膝蓋腱付着部の脛骨粗面部が膨隆した箇所は消えません。
変形性股関節症
原因・起こりやすい部位
股関節の動きで軟骨が摩耗して起こります。女性は関節が柔らかく、一般的に筋力も弱いために、男性よりも発症しやすいです。
症状
初期は運動後に股関節だけではなく臀部、大腿部などにも鈍痛が出ます。症状が進むと股関節周辺に痛みが集中します。
予防・処置
安静が基本ですが、股関節周辺の筋力トレーニングで関節を安定させることも効果的です。症状が重い場合は手術を必要とする場合もあり、手術後のスポーツ復帰は困難です。
椎間板ヘルニア
原因・起こりやすい部位
腰椎の椎間板が損傷し、髄核が外部へ脱出し神経組織を圧迫します。スポーツでは接触や高所からの転落による外傷でも起こります。
症状
初期には激しい腰痛。その後片側の下肢痛、しびれ。圧迫される神経組織によって痛む部位は変わってきます。
予防・処置
神経性麻痺症状がなければ保存療法が一般的。運動麻痺が進行する場合などは手術に至ることもあります。髄核が自然に縮小、消失することもあります。
腰椎分離すべり症
原因・起こりやすい部位
スポーツ選手の場合、多くは発育期の疲労骨折によるものです。椎間関節突起の安定性が崩れ、骨性連続性が破綻した状態です。ただし痛みの原因は今も確定されていません。
症状
鈍く重い腰痛があります。上体を後方へ反らせると痛みが増すこともあります。稀に神経根が刺激されていることによる下肢痛、しびれが出ることもあります。
予防・処置
腰椎分離症に特異的なものはなく、椎間板ヘルニアと同様に保存療法が一般的です。
アライメントとタイトネス
骨や関節の形や並びのことを「アライメント」といい、筋の硬さ(緊張した状態)を「タイトネス」といいます。アライメントに異常があると筋にストレスがかかってタイトネスを引き起こし、逆にタイトネスがあるとアライメントに異常を起こしやすくなります。こういったことが関節や骨に傷害を起こす原因にもなるため、異常が生じやすい部位を認識し、その部位にストレスが集中しないように筋力や柔軟性などのバランスを確保することが大切です。